透析患者さんの高カリウム血症について

 透析患者さんは腎臓の機能が十分でないため、本来は尿中に排泄されるはずのカリウムが血液中に蓄積してしまうという問題があります。カリウムは野菜や果物に多く含まれ、透析患者さんが野菜や果物を無防備に食べ過ぎると血液中のカリウムの濃度が高くなりすぎて、不整脈や心停止などの生命にかかわる重大な病気の原因になることがあります。カリウムはほぼすべての食べ物に含まれていますが、いも類、バナナ、スイカなど、カリウムが高濃度に含まれるものもありますので、気を付けて食事を摂らなくてはいけません。カリウムの摂取量の目安は1日あたり1,500mgです。それぞれの食材に含まれるカリウムの量はいろいろな透析や料理などの本を見るとすぐにお分りになると思いますが、例えば、バナナは1本で約400mg、栗は5個で約400mg、大きいさつまいも1本が約900mgで、このバナナ1本、栗5個、さつまいも1本を食べただけでほぼ1日分のカリウムを摂取してしまったことになります。ですから、カリウムをたくさん含むものを食べるときには量などについてご自分で注意をすることが大切です

 透析患者さんの定期的な血液検査の結果を見ますと、血液中のカリウム濃度が7mEq/l以下では自覚症状を認めることはほとんどないと思います。7mEq/l以上でも無症状の場合もありますが、体の状態によっては症状が出ることがあります。高カリウム血症の症状の一つとして、重度の心拍数の低下(徐脈)をきたすケースがあります。これは血液中のカリウム濃度が上昇しすぎたために、心臓の中にある心拍の調節とその心拍の興奮を心臓全体に伝える刺激伝導系(洞房結節、房室結節、His束、プルキンエ線維)と呼ばれるシステムが高カリウム血症のために抑制され、心臓の電気刺激が通常の速さで伝わらないことが原因であると考えられます。これをそのままにしておきますと、心停止の状態となる危険性が高いので、緊急的な治療が必要となります。

 このような高カリウム血症に関連した徐脈の際の治療ですが、体外式ペースメーカーによる心拍の補助、カルシウム製剤の注射、カリウムを除去する薬の投与、グルコース・インスリン療法などがありますが、透析を行っている施設であればすぐに透析を行うことが最も根本的な治療であると考えられます。ちなみに徐脈の際に抗コリン剤であるアトロピンを投与することがありますが、高カリウム血症が原因である徐脈に関しては、アトロピンの使用はお勧めしません。アトロピンは副交感神経支配が強い洞房結節や房室結節に主に作用しますが、高カリウム血症はそれらの結節だけではなく、刺激伝導系全体の線維を抑制するため、アトロピンにより結節だけを刺激しても理論的には徐脈は改善しないことになります。加えて、徐脈をきたすような深刻な状況では、すでに副交感神経は十分に抑制されているため、その時点でアトロピンの投与を行っても、それ以上副交感神経が抑制されることはなく、効果は期待できません。実際に高カリウム血症が原因である徐脈に対してアトロピンを使用したケースを見たことがありますが、アトロピンの投与では徐脈は全く改善されませんでした。

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