透析低血圧について

 血液透析治療中に血圧が低下することは、日常の透析治療において珍しいことではありません。血圧の低下するパターンも透析開始時に低下するもの、最初から最後まで一貫して低下しているもの、途中で低下するもの、終了時前後で低下するものなどいろいろあります。また、その原因についても一人ひとりの患者さんによって様々な原因が考えられます。今回は最もよくある「透析終了時前後の低血圧」についてお話しようと思います。

 「今までは特に問題なく透析を受けていたのにもかかわらず、最近になり、透析終了時に血圧が下がり、気分が悪くなったり、足が痙攣を起こしたりするようになった。」というようなことをおっしゃられる患者さんは少なくありません。この場合、患者さん自身の体調は安定しているケースが多いと思われます。毎日の食事が適切に摂取でき、運動などが十分に行われていたため、筋肉や脂肪などの体内の水分以外の部分の体重が徐々に増加し、今までと同じドライウエイト(透析治療時に目標とする体重)を目標として透析を行っていると、透析後半になると体内の水分が必要以上に透析で除去されてしまい、脱水状態になっているということが原因であると考えられます。脱水になると、血管内の血液の量が少なくなるため、血圧が低下したり、気分が悪くなったり、足などの筋肉が痙攣を起こしたりします。時には、意識を失ったり、嘔吐したり、徐脈になったりすることもあります。何度もこのようなことがあると患者さんにとってもとても不愉快なことです。もう透析を受けたくないとおっしゃられる方の気持ちもよくわかります。

 この「透析終了時前後の低血圧」の対策としては、ドライウエイトが適正よりも低く設定されている場合が多いため、まず、ドライウエイトが適正かどうかについてもう一度調べ直す必要があります。もし、実際にドライウエイトが過剰に低く設定されているようであればドライウエイトを上げなければいけません。ドライウエイトを再評価する方法としては、一般によく行われているのが、透析終了後に胸部レントゲン写真を撮影して心胸郭比(CTR)を測定し、過去のものと比較すること、心臓超音波検査を行い、左心房の径、左心室の径、下大静脈径等を計測して過去の結果と比較してみること、透析終了時の血液検査でBNPを測定してみることなどがあります。何も評価せずに「血圧が低いので現在内服している降圧薬が原因であるから降圧剤を減量して血圧を上げよう」というようなアドバイスはあまりお勧めできません。また、患者さんの方でも降圧剤を減量したことによって透析時以外の血圧が上がりすぎたりすることはないのだろうかという疑問はあって当然ですし、実際、本当にそうなることが多いと思います。血圧が高いから降圧剤を内服しているのに透析終了時に血圧が下がるからというだけで降圧剤を減量や中止することは普段ある高血圧を悪化させてしまうことが多いでしょう。

 実際に透析終了時に血圧が低下してしまった場合ですが、血管内脱水の状態にあるため、理論的には生理食塩水等の補液が有効であると考えられますし、実際にほとんどのケースではそれだけで大丈夫です。補液のみで不十分である場合には、昇圧剤を使用することもあります。

  現実的には、長期間にわたって透析治療を受けている場合に、常に同じドライウエイトであるということは不自然ではないでしょうか。誰でもすぐ2キロや3キロぐらいは太ったり、やせたりすることはあります。透析患者さんも水分以外で体重が増えたり、減ったりすることがあって当然です。痩せすぎよりは標準体重の範囲内であれば、体重が増えてよいと思います。栄養の摂りすぎは確かに問題ですが、栄養不足はやはり命にかかわる問題です。それにもかかわらず、常に同じ体重を目標にして透析を行おうとすると血圧が下がったり、気分が悪くなったりする原因になります。ただ、水分摂取量、塩分摂取量については気を付けてください。透析1回あたりの除水量が多いとそれはまた透析低血圧の原因になるからです。

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